2009年5月17日日曜日

第1回 日土小学校



「日土小学校」は、愛媛県大洲市出身の建築家、松村正恒(-まさつね、1913-1993)が八幡浜市役所建築課に在籍時に設計した小学校です。
松村は1960年、『文藝春秋』の特集で、故・丹下健三らと並び日本を代表する10人の建築家に選ばれたほどの実力者です。しかし、名をあげることを嫌った松村は、自らを「無級建築士」と名乗り、その後メディアから消えてゆきました。
それでも実力ある松村のこと、晩年には松村の再評価の動きが起こります。そして没後の2000年には、モダニズム建築の記録・保存のための国際組織「ドコモモ(docomomo)」により、松村の建築が「日本の近代建築20選」に選ばれました。その建築が「日土小学校」なのです。
日土小学校は一見すると普通の小学校に見えますが、現代にも通じるデザイン性、「クラスター型」と呼ばれる斬新な教室配置計画、大工の経験技術と構造力学の融合など、建築の細部を見ると、そこには松村のデザインがつぶさに込められています。
それらのデザインは何より、ここで学ぶ子どもたちを思ってのことでしょう。緩やかな階段や、窓を大きく取った教室などに注目すると、その意図は明らかです。そして何より、川面に張り出されたテラス。この場所は、子どもたちにとって、とっておきの場所ではないでしょうか。


設計:松村正恒
所在地:八幡浜市日土町2-851(地図
主要用途:小学校
構造:木造
階数:地上2階
竣工:1956年(中校舎)、1958年(東校舎)
※2009年現在、保存改修と増築工事の実施を迎えています。

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