2009年7月5日日曜日

第6回 萬翠荘(愛媛県美術館分館郷土美術館)

Bansuiso
[image: "Bansuiso" on flickr, by ida-10]


Bansuiso
[image: "Bansuiso" on flickr, by ida-10]


萬翠荘(ばんすいそう)は1922年(大正11年)に旧松山藩主久松家、第15代当主久松定謨(ひさまつさだこと)伯爵の別邸として建てられた、フランス風の洋館です。現在は愛媛県美術館分館郷土美術館として使われています。

松山城の城山の麓に建つこの建築は、表通りから少し奥まったところに位置しますが、NHKスペシャルドラマ「坂の上の雲」の放送にあわせ、隣接する「坂の上の雲ミュージアム」の建設とともに周辺が整備され、あらためて注目を集めるようになったように思われます。坂の上の雲ミュージアムもこの萬翠荘を望むように窓やテラスの配置を計画しています。

建設当時は社交の場として名士が集まったそうですが、屋根に葺かれた銅板や天然スレート、玄関扉の鳳凰のデザイン、ハワイへ特別注文したとされるステンドグラスなど、当時の贅を尽くした建築といえます。

また、この建築の先進性として、鉄筋コンクリート造であるということも挙げられるでしょう。日本に鉄筋コンクリート造の建築が建てられるようになったのは20世紀に入ってからで、愛媛県ではこの萬翠荘が最初の建築だといわれています。鉄筋コンクリート造の耐久性や耐震性が評価されるようになったのは1923年の関東大震災の後といわれますから、それ以前に建てられた萬翠荘は、そのデザインだけではなく、技術の上でも当時の最先端だったといえるでしょう。


設計:木子七郎
所在地:愛媛県松山市一番町3-3-7(地図
構造:鉄筋コンクリート造、屋根小屋組は鉄骨造
階数:地下1階、地上3階
建築面積:409.91m2
延床面積:887.58m2
竣工:1922年
備考:国重要文化財(2011年指定)、愛媛県指定有形文化財(1985年指定)

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