2009年7月11日土曜日

第7回 愛媛県庁舎

Ehime Prefectural Government
[image: "Ehime Prefectural Government" on flickr, by ida-10]


Ehime Prefectural Government
[image: "Ehime Prefectural Government" on flickr, by ida-10]


愛媛県庁舎は、第6回で取り上げた「萬翠荘(1922年)」を設計した木子七郎が、1929年(昭和4年)に設計した庁舎建築です。

御影石を用いた外壁や左右対称で均整の取れたプロポーションからは、西洋の洋式主義的な建築を思わせます。建築の内外に施された様々な装飾も見所のひとつで、扉やアーチ窓の周りなどには、細やかな彫刻が施されています。ステンドグラスや、ドームへ至る艶かしい螺旋階段も見逃せません。このような細かな仕事からは、建設に際して多くの優れた職人が携わっていることを想像させます。

愛媛県庁舎が建てられた昭和初期は、海外から新しい「モダンデザイン」が伝えられると同時に、明治に入り西洋から導入された古典的な「洋式」が日本で独自の進化を遂げ、それらの両者が複雑に入り乱れた状況であったといえます。このような時代に、県庁舎のような重要で象徴的な建築のデザインをする際には、西洋の「洋式」の真似をすれば済むものではありません。つまり、建築家の力量こそが問われた時代といえるでしょう。

実際に、愛媛県庁舎の建築デザインは西洋の洋式風ではありますが、この建築と同じ「洋式」が西洋にあるわけではありません。ドーム状の屋根が乗っている庁舎建築も、これだけ立派なものは、恐らく日本では愛媛県庁舎が唯一のものではないでしょうか。

県庁舎という大きな仕事ですから、設計者の木子も、自らが活躍する大舞台として腕を振るったはずです。個人的には、ドーム屋根や窓に見られる連続したアーチなどの曲線のデザインからは愛媛の南国的なやわらかな雰囲気を感じますが、大阪を拠点とした木子が松山の印象として感じたものがデザインとして込められているようにも想像されます。



設計:木子七郎
所在地:愛媛県松山市一番町4-4-2(地図
構造:鉄筋コンクリート造
竣工:1929年
備考:予約をすれば見学が可能です。(外部リンク 愛媛県>県庁舎見学のご案内

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